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僕の偏見紀行
265 慶良間ブルー(1)あの頃は・・・
2020年7月30日
時津 寿之 時津 寿之 [ときつ としゆき]

1945年、九州にて誕生。2010年4月65才で長年勤務したメーカーを定年退職。家族は息子2人が独立し、今は配偶者と二人暮し。趣味は読書、散歩、旅行。読む本は何でもジャンルを問わず、旅先も国内外を問わずどこでも、気の向くところへ。
▲ 民宿のサガリバナ。夕暮れに咲いて夜が明けに散る花。
▲ 座間味村のメインストリートでシーサーがお出迎え。
▲ 今年も到着後数日は天候不順、3日目の午後からようやく晴れてビーチへ行けた。
今年2月頃、ヨシヒロ君から電話があった。彼が勢い込んで言うには、今なら早割で沖縄往復19200円らしい。

僕らは今年も例年通り沖縄の座間味島へ行くと決めていた。昨年はせっかく行ったのに沖縄地方の梅雨明けが遅れ、座間味島でも滞在中連日雨が降り、ビーチで泳げなかった。

今年こそは、と僕らは7月始めの沖縄遠征を決めていた。メンバーはいつもの通り東京から僕とヨシヒロ君、ジョーさんの3名、名古屋からアカシ君一名、それに今年は九州からも数名の参加希望があっている。

みんな高校時代の仲間、青春時代を共に過ごした。座間味の民宿では、夕食後誰かの部屋に集まり泡盛の宴会に突入する。そんな時決まって始まるのが高校時代の思い出話だ。

見た目は75歳のジジイだが、心は青春真っ盛り、高校時代に戻り他愛ない話で盛り上がる。下戸である僕にとってもこの楽しさは何物にも代えがたい。

僕らが通った高校は福岡県の地方都市久留米にある。県立でルーツは旧有馬藩の藩校だった。その地方では進学校といわれていたが、そんな雰囲気はあまり感じなかった。

田舎の中学から進学した僕には自由な雰囲気が嬉しかった。先生から勉学や日頃の行いについてとやかく言われることはなかった。

入学して一番驚いたのが、個性的な先生が多いことだった。ある国語の先生は、初めての授業で、挨拶もそこそこにいきなり源氏物語について語り始めた。

題名しか知らなかった僕は、いきなり異次元の世界に連れ込まれた思いがした。先生はなんの資料も見ることなく、物語の概要と面白さについて語り続け、黒板一杯にそれを書いていった。僕はひたすら語り続ける先生の迫力に圧倒され、感動した。

国語の先生の中には詩人として知られた方もいた。この先生もちょっと変わっていた。この先生授業中教卓に座ったまま、ぼそぼそと低い声で語り続けた。先生は、聞こえにくいと言われても、ああそうか、と思うだけです。話し方を変えるつもりはありません、彼は聞き取りにくい声でそう言うだけだった。

生徒も多士済々で、勉学に励む秀才もいたし、落第しそうになって、試験をカンニングでしのぐのもいた。たとえば先生の眼を盗んだ答案用紙の交換。僕も頼み込まれて隣人の白紙答案と交換したことがある。先生に見つかりそうになったけど、何故かその先生は見て見ぬふりをしてくれた。

その頃から僕は本を読むのが好きだった。当時新進気鋭の作家として注目されていた大江健三郎や開高健の鮮烈な作品に出会い、その魅力にとりつかれた僕は図書館で「文学界」「群像」などの文芸誌を読み漁った。当時彼らの文学を理解していたとは言い難いが、それ以来文学かぶれの道をたどることになった。特に開高健の「日本三文オペラ」は底辺に生きる人々のエネルギーが溢れ、大きな衝撃を受けた。

図書館で参考書を前に勉学に励む連中をしり目に、文芸雑誌や小説を持ち歩き、図書館は本を読むところで、勉強する場所ではない、などど愚かなことを考えていた。

そんな時調子に乗った僕は、なんの考えもなしに、友人と二人で昼休みに学校裏の食堂へラーメンを食べに行った。この食堂は安くて旨いメニューを揃えていたので学生に人気があった。

美味しいラーメンに満足して校舎へ戻ると、運の悪いことに校門でうるさ型の体育教師と出会ってしまった。僕らは職員室に連れこまれ、こっぴどく叱られた。

僕らの罪状は、無断外出及び外食、さらに悪いことにスリッパのまま外に出ていた。まだ一年生の分際で大胆不敵なことをすると教師に叱られ、そんなに大それたことをしたのかと僕は初めて気づいた。思えば愚かでのどかな僕の青春だった。

この時代について書きだすとついつい止まらなくなる。僕にそれほど多彩で楽しい時期だったということだ。文学かぶれにとって、勉強なんか二の次、人生にはほかに学ぶべきことが多い、と都合のいい理屈をこねで好きなことばかりやっていた。当然それは学業にも響き、親の期待を裏切ることになった。

本題の座間味島だが思わぬ事態が発生し先行きが怪しくなった。航空券を手配した2月頃から始まったコロナ問題がその後次第に深刻化し、僕らの計画実行が危うくなってきた。

常に前向きのリーダー、ヨシヒロ君はあくまでも強気で、7月ごろには何とかなるさ、という意見だった。楽観論者の僕も、そうだ、そうだと彼に賛同した。ところが日を追うごとに情勢は厳しくなったきた。

そのうち恐れていたことが起きた。東京勢の一人、ジョーさんがどうしても奥さんの了解が取れず、参加できなくなった。奥さんから、どうしても行くなら、帰ってから2週間は家に入れない、と通告されたらしい。

東京勢は1名減って僕とヨシヒロ君の2名となってしまった。僕と彼は、メンバーが減ってもいいじゃないか、一人旅だと思えばいい、そう言い合って互いを慰めた。名古屋と九州は予定通りということなので、総勢6名、ノープロブレム!

ただ、彼らはぼくらより3日遅れの予定なので、座間味で合流するのは4日目からとなる。それまでヨシヒロ君と僕の2人旅だ。それはそれでいいじゃないか、僕らはそう考えたが、一つ問題があった。それは僕が下戸であること。

いつもはヨシヒロ君とジョーさんの2人が酒を飲み、僕はウーロン茶でお付き合いということになっている。気になってヨシヒロ君に確認すると、一人で適当にやるからいいよ、といってくれた。ぼくもウーロン茶で場を盛り上げようと考えた。

非常事態宣言まで出されたコロナ問題だが、第一波が辛うじて収まる兆しをみせ、僕らのスケジュール、6月30日出発、7月7日帰宅の頃は何とかなりそうな雰囲気になって来た。

現地の様子を民宿に確認すると、現地でも観光客の受け入れ準備を進めており、7月頃には観光客ウエルカムとなるだろう、ということで一安心。行けば何とかなるさ、なんくるナイサー。(続く)
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215 バンコクの12日間(2)バンコク徒然
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213 座間味島の夏
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124 メコンへの旅(14)ルアンパバンの路上にて
123 メコンへの旅(13)ルアンパバン上陸
122 メコンへの旅(12)メコンクルーズ
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117 メコンへの旅(7)嗚呼!黄金大三角
116 メコンへの旅(6)国境の町
115 メコンへの旅(5)ゾウの背に揺られて
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113 メコンへの旅(3)山上の祝福
112 メコンへの旅(2)ア・ディ・イン・チェンマイ
111 メコンへの旅(1)チェンマイ到着
110 老いぬれば
109 アイルランド紀行(11)聖人と文豪
108 アイルランド紀行(10)人をつるす木もなく・・・
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105 アイルランド紀行(7)レプラコーンに気をつけて
104 アイルランド紀行(6)ダンロー峡谷
103 アイルランド紀行(5)ホテルをめぐる女たちよ
102 アイルランド紀行(4)MAN O’ WAR 
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98 ベトナム紀行(8)駆け足バンコクそしてハノイ
97 ベトナム紀行(7)サヨナラ!「サイゴン」
96 ベトナム紀行(6)再びのホーチミン
95 ベトナム紀行(5)アンコール・ワットの空の下
94 ベトナム紀行(4)タイを追い出した町
93 ベトナム紀行(3)メコンデルタの森へ
92 ベトナム紀行(2)暑い!ホーチミン町歩き
91 ベトナム紀行(1)「僕の1号線」はどこに?
90 マイ・センチメンタル・ジャーニー
89 シルクロードの旅(12)風の城、アヤズ・カラ
88 シルクロードの旅(11)「博物館都市」イチャン・カラ、ヒワ
87 シルクロードの旅(10)ちいさなリンゴ
86 シルクロードの旅(9)「愛の町」アシュハバード
85 シルクロードの旅(8)中央アジア最大の世界遺産メルブ遺跡
84 シルクロードの旅(7)未知の国へ
83 シルクロードの旅(6)国境越え
82 シルクロードの旅(5)ブハラ、深夜のトイレ
81 シルクロードの旅(4)ブハラへの道
80 シルクロードの旅(3)アレキサンダー大王が来た街
79 シルクロードの旅(2)青の都サマルカンド
78 シルクロードの旅(1)タシュケント到着
77 小笠原の旅(7)惜別
76 小笠原の旅(6)小笠原海洋センター
75 小笠原の旅(5)母島列島
74 小笠原の旅(4)宝石の島、南島
73 小笠原の旅(3)ザトウクジラの海
72 小笠原の旅(2)BONIN ISLANDS
71 小笠原の旅(1)波路はるかに
70 インド紀行(7)タージ・マハルの光と影
69 インド紀行(6)ガンジス川の夜明け
68 インド紀行(5)夜行寝台「ハウラー・カルカ・メイル・2311号」
67 インド紀行(4)ダージリン滞在
66 インド紀行(3)ダージリンへの道
65 インド紀行(2)コルカタにて
64 インド紀行(1)遠かったインド
63 暮れの浅草昼酒
62 雨の東北、芭蕉と紅葉旅
61 南会津の旅◆扮の尾瀬沼)
60 南会津の旅 弁愡浚村)
59 奥日光戦場ヶ原
58 スコットランド紀行(5)いくつかの思い出
57 スコットランド紀行(4)偉大なり、ピーター・ラビット
56 スコットランド紀行(3)ネス湖からスカイ島へ
55 スコットランド紀行(2)ウォールフラワー
54 スコットランド紀行(1)エジンバラ大学でお茶を
53 風に吹かれて八丈島(3)
52 風に吹かれて八丈島(2)
51 風に吹かれて八丈島(1)
50 イリオモテヤマネコに逢いたくて(4)
49 イリオモテヤマネコに逢いたくて(3)
48 イリオモテヤマネコに逢いたくて(2)
47 イリオモテヤマネコに逢いたくて(1)
46 秋空の下、いくつかの再会
45 白神の森の宝
44 挑戦!乗鞍岳
43 北東北ローカル線の旅 (4)津軽じょんがらの夜はふけて
42 北東北ローカル線の旅(3) 雨の下北恐山
41 北東北ローカル線の旅(2) うみねこレール
40 北東北ローカル線の旅(1) 春のうららのドリームライン
39 50年の時を超えて
38 知床の秋(2)、ウトロにて
37 知床の秋(1)、鮭遡上
36 風に吹かれて尾瀬ケ原
35 白神山地「ブナの学校」
34 初夏の山形、サクランボとそばの旅
33 ハワイ島滞在記(2)
32 ハワイ島滞在記(1)
31 春の予感、鹿沢(かざわ)高原にて
30 嗚呼!還暦大同窓会
29 年の暮れ、奥那須で想う
28 ラムネの湯「長湯温泉」はいいぞ
27 また「再会の時」道後温泉にて
26 大自然の力、姥湯温泉
25 知床の青いそら、光と風 その
24 知床の青いそら、光と風
23 春の東北ローカル線の旅
22 春の東北ローカル線の旅
21 春の東北ローカル線の旅
20 上海点描
19 やさしかったチェジュの人たち
18 さらば、災の年よ。
17 僕たちのセンチメンタルジャーニー
16 台風を避けて信州へ
15 青島印象記
14 よるべない孤独にみちた宿
13 海があまりに碧いのです
12 安曇野の光と水、そして高瀬川渓谷葛温泉
11 鞍馬山の向こうへ、大悲山峰定寺
10 雪の会津鉄道トロッコ列車の旅
9 初春初旅救急車
8 年の暮れ、峩々温泉再訪記
7 東北紅葉旅峩々温泉
6 蔦温泉、蔦沼、ブナの森
5 雨の幕川温泉再訪記
4 憧れのフルム-ン法師の湯
3 信州塩田平別所温泉
2 信州信濃路
1 東北紅葉雪見風呂
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