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82 韓国民謡 アリラン (日本語版)
2018年10月18日
吉田 美智枝 吉田 美智枝 [よしだ みちえ]

福岡県生まれ、横浜市在住。夫の仕事の関係で韓国ソウルとタイのバンコクで過ごした。韓国系の通信社でアシスタント、翻訳、衆議院・参議院で秘書、韓国文化院勤務などを経て現在に至る。自作のアクセサリーをBeads Duoというブランドで販売しながら、韓国の主に女性たちについてエッセーを執筆中。『朝鮮王朝の衣装と装身具』(共著)、韓国近代文学選などの翻訳がある。
▲ 韓国江原道旌善郡は山深い渓谷の山里。九美というところで車を降り、河原に降りた。九義(クウィ)と書かれた、昔からの東屋があった。古えの人々がここで休み、渓流を眺めた様子が目に浮かぶようである。
▲ アウラジ祭りは、古く男たちが筏で材木を漢陽(ソウル)に運んだ様子を再現している。(写真:江原道民日報より)
▲ 九義(クウィ)の東屋(あずまや)の前には岩山が迫る。雨後なのか渓流は黄色く濁っていた。

アリラン アリラン アラリヨ〜
アリラン峠を越えていく....

韓民族を代表する民謡アリランの意味をご存知だろうか。

アリラン(恋しい人よ)アラリヨ(知っていてください)...という意味だと聞いた。
つまり`『私がいることを忘れずに覚えていてください』という意味なのだそうだ。

『十里も行かずに脚を患う』と続くよく知られる歌詞は、その哀切なメロディーとともに、自分を残し旅立った男への女性の恨(ハン)を歌った恨み節(タリョン)というイメージが強い。

その感情の重みからか、または幼い頃からあまりに有名な歌で頻繁に聞いてきたからか、韓国の人たちの口からは、いまさらあえて聞きたい歌でもないというニュアンスのことばをきく。

アリラン峠は、実在する峠ではなく伝説上のもので、後に各地の峠に名付けられたといわれている。アリラン民謡は、珍島、密陽、旌善、京畿、海州など各地にあり、現代の編曲を含めると無数にあるが、アリランの源流は、一般のアリランに比べて素朴である。いわば正調アリランといえよう。

今年6月、東海(トンヘ)から江陵へ戻る帰途、アリランの発祥の地といわれる韓国江原道旌善郡を通った。

上っては降る、曲がりくねった道路がどこまでも続く山深いところで、時折すれ違う大型ダンプを除けばほぼ車はなく、緑深いなかを流れる渓流を眺めながらひたすら走った。

アリランの歴史は、約600年前にの高麗時代末期に遡るといわれるが、その発祥の地は、今度冬季オリンピックが開催される平昌郡の高峰である大関嶺(テグァンリョン)から流れ来る松川と、東海側の海岸都市である三捗(サムチョク)からのコルジ川という2つの川が合流するアウラジという場所である。

アウラジは、水がオウロジダ(混じり合う)ということばからそう呼ばれるようになったそうである。

水の流れを利用して木材を筏で漢陽(ソウル)に運ぶ船頭たちが歌い、旅だった男性たちを偲び、女性たちが仕事の合間にった歌がアリランなのである。

九義(クウィ)亭という東屋(亭子)のあるところで車を停めた。河原に降りると、岩のごろごろとした渓流は、すぐ前まで山が迫り、雨の後なのか黄色く濁っていた。

アウラジので合流する二つの川のうち、松川(陽水)の水量が多いと洪水が起こり、コルジ川(陰水)の水量が多いと梅雨(長雨=チャンマ)が長く続くといわれる。それほど様々な表情を見せるのがこの渓谷なのだ。

恨(ハン)は、韓国民族の人々の情念だと言われる。日本人はともすると、それが韓国の人々の激しい気性に繋がるものだと誤解しがちであり、また韓国人自身も重たい恨みの感情として捕らえがちだ。

だが、韓国に住んだ経験があり、その後も長く韓国という国と人々と関わってきた日本人の私には、それは決して生々しくも激しくも重たい感情でもなく、浄化された、悲しい運命を甘受しつつ逞しく生きる人々の意志のように感じられる。日本列島の湿度の高い風土と異なる、大陸に続く半島の風土と、乾いて澄んだ空気のように...。

山道を車で下りながら、脚地(漢陽)に向かって木材を載せた筏を漕ぐ男たちと、その男たちの帰りを哀切な思いで待ち続ける女たちが口ずさむアリランの歌が、この山里に響き渡る気がした。

キム・ヨナ選手が2012年にアイススケート世界選手権でテーマ曲として滑った「Hommage to Korea 」、その前の2002年の日韓ワールドカップサッカーの応援歌にも取り入れられたアリランの曲が、次に流れるのは、この江原道の平昌オリンピックになるのであろうか。

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