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ぴくせる日記
17 千羽鶴
2010年11月28日
橋場  恵梨香 橋場 恵梨香 [はしば えりか]

アメリカ生まれ、日本育ちの日系二世。小学二年生から高校卒業まで東京のアメリカン・スクールに在学。2005年にサンディエゴ州立大学アジア研究学部を卒業、そして2008年に同大学にて言語学修士号取得。現在カリフォルニア州のサンタクルーズに住み、サリナスにある公立高校で日本語教師を務める。念願の一眼レフを手に入れ、生活の中の小さな幸せをレンズを通して見つけている。英語のブログはこちら:http://thehungrypixel.tumblr.com
研究会のみなさん、すっかりご無沙汰してしまいました。ごめんなさい。

この夏いろいろな変化があり、以来、仕事とプライベートを両立することに悪戦苦闘しています。一番大きかった変化は、8月から新しい仕事を始めたことです。(エッセイは7月でピタっと止まってしまっていますね・・・)3ヶ月経ってやっと慣れてきて、やっと仕事以外のことにも少しずつ手を出せるようになってきました。

新しい仕事はというと高校での日本語教師です。この仕事に就く前は5年近く大学で教師をした経験がありますが、高校で教えるというのはまったく別問題であることに気が付き、責任の重大さに始めはかなりビビっていました。ほぼ同い年であった大学生を30人相手にするより、年下であれども子供でも大人でもない微妙な年頃の高校生を相手にする方が遥かに恐ろしいことに思えたのです。しかし、いざやってみると、なんやかんや手応えがあって面白いぞ・・・と思えてきて、大変ではありますが、やりがいを感じながら仕事に励んでいます。しかし大変とは言っても、この高校、クリスチャンの私立高校なので、大体いい子たちばかりです。

ところでアメリカの高校で日本語の授業があるというのは嬉しいことですよね。大抵の大学では日本語を取ることができますが、高校では珍しいことです。この高校ではスペイン語、フランス語、そして日本語のうち、日本語が一番人気の外国語であり、生徒は高校四年間取ることができます。月曜日から金曜日まで、毎日5クラス教えています。好景気のときでさえなかなか日本語教師の仕事の空きがないのが普通ですから、まるで夢のような条件ですが、残念ながらこの仕事、一時的なものなのです。

この学校で日本語がこれだけ人気があるのは、全てD先生のおかげです。D先生はこの学校の日本語課を始めた先生で、20年近くも一人で全ての授業を教えてきました。D先生は他の先生や生徒に深く尊敬されていて、とても元気で、前向きで、ユーモアたっぷりの方です。生徒たちが日本語を選ぶ理由そのものが、D先生なのです。そのD先生がこの夏、癌と診断されました。急遽手術をすることになり、学校を休まなければならなくなりました。そこで学校側は秋学期が始まる直前に慌てて代行教師を探すことになったのです。

新しい学年が始まり、楽しみにしていた日本語のクラスに行くと、D先生ではなく、見覚えのない誰かさんが教壇に立っていて生徒たちはさぞかし残念に思ったことでしょう。私は偉大な先生の「代わり」をしなければいけないという現実に直面し、希望の日本語教師の仕事に就いたことを喜ぶひまもありませんでした。しかしオドオドしている余裕なんてありません。「かかってこいっ!!」という感じでこの3ヶ月間をサバイバルしてきました。

今では生徒たちともそれなりの絆を築くことができ、難しいヤツもいるけど、「先生いなくなったら悲しい〜」なんて(どうせ点稼ぎをしようとしてるだけでしょうけど)言ってくれる子たちも出てきました。私にとっては、この仕事が今までで一番やりがいのある仕事だと感じています。

しかしどんなにこの仕事を続けたいと思っても、やはりD先生が速く元気になって、学校に戻って来てもらいたいと心から願っています。今先生は抗癌剤治療を受けていて、早くても2月までは休まなければならないそうです。この仕事を始めてから先生とは頻繁に連絡を取り合い、親しくなることができました。先生がこの高校で始めた日本語課で、少しの間だけでも教師をすることができ、本当に光栄に思っています。

学期が始まってまもなく、私は日本語の生徒全員と、D先生のために千羽鶴を作ることにしました。鶴の作り方から始め、まる2ヶ月間かけて、生徒一人一人が折った鶴でできた千羽鶴が先月完成しました。鶴を一度も折ったことのない生徒がほとんどでしたから、簡単な作業ではありませんでした。

先生は千羽鶴をとても嬉しそうに受け取ってくれました。先生は外出する元気は充分あったので、千羽鶴のことはなにも言わずにある日学校に来てもらい、お昼時間の始めに生徒みんなで校庭に集まりました。それで千羽鶴をプレゼントし、先生が大好きなSMAPの歌、「世界に一つだけの花」をみんなで歌いました。校長先生、教頭先生や他の先生も集まってくれました。

この仕事の先どうなるかは分かりませんが、とにかくこのような素晴らしい経験ができて幸せです。

さて、来週の教案はというと・・・白紙の状態です。宿題の採点も溜まっています。あぁ、はやく冬休みにならないかな〜(笑)。
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