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カニを食べて分かったこと |
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2017年1月1日 |
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 | 橋場 恵梨香 [はしば えりか]
アメリカ生まれ、日本育ちの日系二世。小学二年生から高校卒業まで東京のアメリカン・スクールに在学。2005年にサンディエゴ州立大学アジア研究学部を卒業、そして2008年に同大学にて言語学修士号取得。現在カリフォルニア州のマリーナに住み、サリナスにある公立高校で日本語教師を務める。 |
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先日、カニを食べる機会があった。
しかも、ビュッフェ!久しぶりの日本での年末年始、これ以上の贅沢はない。なんせ日本のビュッフェだから、カニ以外にも実に洗練された食材と料理が並んでいるのだが、カニがあるとどうしても炭水化物や揚げ物は控えるようにする。
ビュッフェにもかかわらず結構ぜいたくな大きさの真っ赤なカニ足がきれいに大皿に盛ってある。恥じもなく何本もお皿に取り、席に戻った。
お皿からはみ出るカニの大盛りを眺め、私は思った。カニはおいしいけど、面倒くさい。むしろ大変な思いをして食べるから、おいしく感じるだけなのではないだろうかと、ふと騙されたような気分に一瞬なった。いけない、いけない・・・そんな気持ちに惑わされてせっかくのカニ主役のビュッフェ、台無しにされてはたまらない。
私はカニ用に置いてあったハサミを構え、早速とりかかった。眉間にシワを寄せて踏ん張り、カニの殻がきれいに二つに割れた。一口目。食べることが大変だからおいしく感じているわけではなく、実際においしいのだということを、ここでひとまず確認。しっかり塩味もついていて、ずいぶん旨味がある。
そうだ!カニは身を出すのは大変だし、手は汚れるし、一気に全部むいてしまったあとに、まとめて食べよう!そう決めた。
両親とパートナーがいる中、私一人だけが、その作戦に出た。他のみんなは、ほじくりながら、ちびちび食べていた。私は最後に山盛りになったカニ肉を想像し、わくわくした。
15分くらい、私は無言の集中力で、カニをひたすらほじった。最後にできたカニの山盛りは、見るだけでかなり満足できるものだった。
さぁ、食べるぞ!カニ用の小さいスプーンでなく、普通のフォークで食いついた。
ん〜〜・・・しょっぱ!!!
最初に食べた時の一口でほどよかった味付けが、フォーク大盛りになると、かなりくどかった。密集した旨味で、一気に胃がもたれた。
なんて情けない展開。とってもおいしいものが、ありすぎると、おいしくなくなっちゃうこともあるのね・・・
肩をすくめカニを眺める私に、母が言う。「そうそう、カニは身を出したらすぐに食べた方がおいしいのよ。」それ、もっと早くに言っておくれよ母・・・
カニの山はなるべく味気のない物と交互に食べ、ヤケクソの思いでなんとか平らげた。
私はここで大切な人生の教訓を学んだ。
人生は、少しずつでいいから、「今」を楽しむべき。今我慢して、がんばって貯金して、最後に楽しもうと思っても、今、食べた方が絶対においしいものもある。
2017年、将来の自分のためにも頑張りながら、なおかつ一日一日に小さな幸せを見つけることができる一年にしたいと思う。
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