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ぴくせる日記
26 遠距離日記
2014年1月1日
橋場  恵梨香 橋場 恵梨香 [はしば えりか]

アメリカ生まれ、日本育ちの日系二世。小学二年生から高校卒業まで東京のアメリカン・スクールに在学。2005年にサンディエゴ州立大学アジア研究学部を卒業、そして2008年に同大学にて言語学修士号取得。現在カリフォルニア州のサンタクルーズに住み、サリナスにある公立高校で日本語教師を務める。念願の一眼レフを手に入れ、生活の中の小さな幸せをレンズを通して見つけている。英語のブログはこちら:http://thehungrypixel.tumblr.com
▲ 日本でトライアスロンに挑む父ちゃんのために応援メッセージを懸命に振るぽっぽ。振りすぎて紙吹雪になっちゃった。
▲ 無事ゴールイン。ショートディスタンスはスイムが1.5キロ、バイクが40キロ、ランが10キロ。
昨年一月から研究のため一年間日本に滞在していたパートナーのダスティン。居候したのは千葉県の下総中山にある私の実家。義父母との同棲生活がはじまったのでした。一方の私はカリフォルニアに残り、高校教師の仕事を続けました。そんな私達の一年間の遠距離生活に伴ったあらゆる変化、誤解、そして笑い事についていくつかご紹介したいと思います。


* 32才の高校生

今、両親が住むマンションは私が大学へ行ってから引っ越したところ。それでも一応私の部屋というものを残してもらっていて、そこは高校生のときのままの机や、シングルベッドや、ホコリをかぶったぬいぐるみや、もう十年以上も着ていない洋服などが詰まっている。その部屋が、一年ダスティンの部屋となるのだった。

ダスティンが到着するなり、足がはみ出してしまうほど小さいベッドの上には新品のパジャマが用意してあったらしい。母は何かしらパジャマ好きで、ありとあらゆるパジャマや部屋着を買い揃えている。「生協のカタログでこの前注文してみたんだけど、ちょっと着てみて〜」と、私にもよく買っては着せてみる。ダスティン用にパジャマが用意してあったのは、当たり前のことだった。

久しぶりに「親」がいる生活が始まり、高校生の部屋に入れられ、まるでティーンエイジャーに戻ってしまったような感覚だっただろう。「手袋あるの?」「念のためカイロも持ったら?」と、外出前の母の念入りチェック。風邪をひいたときは、治るまで毎日欠かさず朝一番でかかってくる(元医者である)祖父からの電話。ダスティンは実に、高校生の私と入れ替わったのだ。

とはいえ、やはり実際は32才。こんなにも構ってくれる家族ができて嬉しい
反面、たまには気楽な一人の時間もほしく、部屋にビールやおつまみを持ち込み、パソコンでDVDを見たりしたらしい。そういうオジさん臭いことをしても、やっぱりぬいぐるみやピンクの造花に囲まれていると、32才の学者ではなく、どうしてもお茶目な女子高生の気分になってしまうダスティンなのだった。


* 今日もまたズーメー館 

論文の資料集めにあらゆる所へ足を運んでいたダスティン。昨日はどこどこの図書館に行って、今日はどこどこの資料館で、明日はどこどこの本屋に行くのだと。実際一緒にいない私としては、毎日どこに行っているかなんて、言われてもうまく区別付けられなくて、なかなかついて行けない内容だった。「今日はどこに行くんだっけ?」と聞くと、「昨日言ったじゃーん。大原社会問題研究所だってば。」「あそっか〜、がんばってね。」全然聞いた覚えはないけど、とりあえず応援の一言。

ある日、またいつものようにその日の予定を聞いてみると、

「ん〜、今日は立教共生研究センターに行って・・・その後はズーメー館に寄ろうかな」と。

「ふ〜ん。」

ズーメー館。。。この前もそこ行ってたなぁ。何回か聞いている場所の名前だけど、どういう内容のとこだか覚えていない。聞いたらまた怒られそうだけど・・・

「ズーメー館って、どこの資料館だっけ?」と恐る恐る聞いてみた。

「資料館?ズーメー館は駅前の立ち飲み屋だよ〜。」

「・・・」

そして二人で爆笑。

どうりでよく聞く名前だと思った。ダスティンが言う「ズーメー館」とは、駅前の小さな立ち飲み屋、「づめかん」のことだった。日本語を勉強する外国人に典型的な間違いが、母音の長い短いの区別がつかないこと。「ごぼう」が「ごぼ」になったり、「づめかん」が「づうめいかん」になったりするのです。その立ち飲み屋へ、たまには父と、たまには一人で。すっかり常連客のダスティンは、仕事の帰りによく「ズーメー館」に寄り、社会研究を実行していたのだった。


* 少し大人になったぽっぽ 

ぽっぽはうちのお坊ちゃまインコ。一人ぼっちが大嫌いで、私がトイレに行くだけでも大げさに泣き叫ぶ。やはり食事も一緒に食べる方が良いらしく、おりの中に常に餌が入っている状態にも関わらず、こちらが食事を用意するとタイミングを合わせて自分もぽりぽり食べ始める。そんなぽっぽは、一人でお留守番のときは断食モードに入ってしまう。帰ってくると腹ぺこのぽっぽはずっと目の前にあった餌を「待ってましたーーー!!」という勢いで食い付く。

夜の講義が多く、昼間はわりとうちにいることが多かった父ちゃんがいなくなったぽっぽは、平日は12時間近く一人で過ごす毎日が始まってしまった。最初の頃はやはり餌を食べず、暗くなって帰る私を待ってから食べていた。しかし一ヶ月ほど経った頃だろうか。いつもは餌へ一目散のぽっぽが、私が帰って来てもなんと一本足でクールにくつろいでいる。何事じゃ、と思い、おりに近づくと、なんと餌が減ってる!そっか、ぽっぽようやく一人で食べたか。そうだよね、食べなきゃ死んじゃうもんね。それを自分でも気づいたんだね。エライ!!(と、のんきな母。)毎日置き去りにする母をにらむぽっぽ。一人でも餌を食べられるようになって、一つ大人になったのだった。


* 予測変換で分かったこと 

学校の教師は大抵夏休みでも色々と学会やワークショップに出て忙しく過ごすのですが、去年の夏は「スイマセン、失礼しま〜す!」( ̄∇ ̄)ノ という感じで、休みになった途端、飛行機に飛び乗って日本へ向かった。家族揃って温泉旅行、二人で北海道巡りなど、100%家族&日本を堪能させていただいた。

日本に帰ってくると、ケータイがないので、ちょくちょくダスティンのスマホを横取りして使わせてもらっていた。友達にメールを書いていたあるとき、私は「ば」で始まる言葉を書き始めたところ、予測変換の画面が出てきた。以前使われて記録に残っている「ば」で始まる言葉。その中に、「バミヤーン」とあった。

バ、バミヤーン・・・

両親のマンションは、中華レストラン、バーミヤンの真向かいにある。この予測変換で分かった事:

1.ダスティンが「バーミヤン」を「バミヤーン」と勘違いしていること。

2.バーミヤンはうちの近くにあることから、恐らくメール相手は父だった。(研究関係の方と下総中山の中華ファミレスに行くはずがない。)

3.母が祖父のうちで手伝いをし、夕飯も済ませてからうちに帰る日だったと思われる。父は夕飯の予定がなく、ダスティンにメールを送ってみる。
「夕飯どうする?」
「じゃ、バミヤ〜ン行こう。」
そんなとこだろう。
この会話、一年の間、恐らく何回かは発生した。

電車の中でメール作成中だった私は、思わず「ぷっ」・・・予測変換でチラリと見えたダスティンの日本生活。マンション向かいの中華レストラン、うちでは愛称「バミヤ〜ン」と呼ばれている。

* 息子ができた父

父は若い頃、水泳のオリンピック選手になることを夢見た。私が産まれたとき、意図的にかどうかは分からないが、その夢が一人娘である私に託された。しかし五才のある日、スイミングレッスンが終わって、うじうじしながら出て来た私は半べそで言ったらしい。

「あのね、エリカね、・・・競争するのきらいなの。」

父の夢はそこらへんで幕を閉じたのだった。

それでも父は相変わらず運動/挑戦好きで、40過ぎてからトライアスロンに目覚めた。私や母はまるで興味がなく、応援すらまともにしない。初めてのトライアスロンは、一人でサイパンに飛んで行き、見知らぬ他人の歓声に勇気付けられゴールイン。

ところが近年、父には息子ができた。息子は背が高いアメリカ人で、運動神経もそこそこあるタイプのようだ。その息子が日本に一年滞在する事になり、さらには新しく購入したロードバイクをなんと一緒に担いで来ていた。父の目は光った。

ダスティンが日本に到着した晩、とりあえず自宅にて飲み会が始まった。息子以外に飲み相手まで増えた父は大喜び。飲み明かしたその翌日(到着翌日でもある)、ダスティンは父に連れられ、さっそく海水パンツを買いに行かされたそうだ。

去年五月には、父はその息子と、新島のトライアスロンに出た。もちろん私はカリフォルニアにいて応援しに行けなかったが、ぽっぽ作の応援メッセージをちゃんと写真で送っておいた。

オリンピックには出られなくても、親子揃ってトライアスロンに出場できるのだから、父は大満足だろう。ダスティンは、父の念願の息子なのだ。


さて、サンタクルーズに戻ってきたダスティン。妻との生活にまた慣れなければなりません。何年か前、「ダーリンは外国人」という漫画がヒットしましたが、ダスティン、「義理の家族は日本人」、いつか書いてくれるかな?
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