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超級市場 vs 紅街市 |
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2008年12月22日 |
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 | 橋場 恵梨香 [はしば えりか]
アメリカ生まれ、日本育ちの日系二世。小学二年生から高校卒業まで東京のアメリカン・スクールに在学。2005年にサンディエゴ州立大学アジア研究学部を卒業、そして2008年に同大学にて言語学修士号取得。現在カリフォルニア州のマリーナに住み、サリナスにある公立高校で日本語教師を務める。 |
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マカオに来てまず最初に出掛けたのが「超級市場」。外来語好きな日本ではそのままスーパーマーケットと呼んでいます。日本やアメリカではこのスーパーに行けば、お肉、野菜、パン、洗剤、肌着・・・なんでも買えちゃう、まさに超級な市場です。
マカオの超級市場へ行って見ると、一見どこのスーパーとも変わらぬ様子。しかしよく観察するとちょっと違います。かなり充実している冷凍食品を見てみると、お・・・冷凍小籠包。お菓子セクションに行くと、あれ〜無印良品のお菓子がこんなところに???と思ったら包装がそっくりな偽モノ。なかなかやるなー、なんて思いながら肉類へ近づくと・・・むむ。干からびたニワトリまるごと一羽(頭付き)。灰色がかった豚のひき肉。何月もの冷凍期間を終え、久しぶりに表に出てきたとしか思えないカチコチのささ身肉。こりゃ絶対に食べたくないぞ。
しかし、食に特別な情熱を持つことで知られている広東文化の一部であるマカオに住む人々が、わたしが超級市場で目撃した頼りないお肉で済ませてしまうわけがありません。しかもマカオのシーフードはおいしいと散々聞いていたのに、スーパーには一切置いていないのです。なんとしたことか。
この謎の答えが「紅街市」、英訳レッド・マーケットでした。
レッド・マーケットは赤いレンガ建ての大きい倉庫のようなところ。一歩入ると、お肉、野菜、シーフード、乾物、と、超級市場では乏しかった品物が勢ぞろい。フレッシュどころか、鳥は生きた状態で売っています。お野菜はつやつやのすべすべ、超級市場でのようにプラスチックなんかに入っていないので、ついつい触りたくなります。乾物は食べたら千年くらい生きちゃいそうな得体の知れないものがズラリ。
超級市場でこういうものが手に入らないのは、きっと「新鮮」を特別重視ししているからではないかと思います。スーパーで売っているサランラップされたお肉なんか、新鮮なわけがない。自分の目で見て、確かめて、触れるなら触って、買う。
そしてスーパーにはない、微笑ましい人間同士のやりとりがレッド・マーケットでは見られます。広東語をしゃべる友人とマーケットを訪れたとき、さっきまで生きていた魚をさばきながらおばあさんは友人に話しかけました。残念ながらわたしの広東語はまだまだでちゃんと聞き取れませんでしたが、決して初対面だとは思えない、まるで祖母と孫のような親しげなやり取り。おばあさん、さばき終わると顔にウロコがめちゃくちゃくっついているのをちっとも気にせず(というか気付いていないらしい)魚をプラスチック・バッグに放り入れてわたしに渡しました。この袋が魚の汁やら生簀の水にまみれていて、きれい好きな日本人である私はつい嫌々、指二本でつまむように持ちました。これがスーパーだったら・・・・・いや、ちょっとまった。魚料理をするなら手は魚臭くなるはず。わたしはそんな当たり前なことをそのとき気付かされ、心入れ替え、魚を堂々と持つことにしました。
きっと、マカオはレッド・マーケットがなくなってしまっても、どうにかなります。しかし、なぜスーパーで済ませないのか。なぜ今時レッド・マーケットというものがまだ残っているのか。わたしはそんなマカオがますます好きになりました。
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