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中山 俊明
前回この欄で千鳥が淵の満開の桜を紹介した直後、九州の筑後川沿いを旅した。福岡は九州といっても裏日本、東京より寒く、従って桜の開花時期も数日遅い。行く先々で満開の桜を心行くまで堪能した。
昨年暮れから福岡住まいを始めた会員のＮ君のドライブで訪ねたのは、久留米→耳納連山→原鶴温泉→吉井町→田主丸町と筑後川沿いの町々だ。
久留米は父が亡くなって以来６年目の再訪だったが、町は無残に変貌していた。町中はマンションラッシュで、特にかつての実家近辺は原型をとどめぬほどに再開発、いや乱開発され、その跡を探しだすのに苦労したほどだ。駐車場になってしまった実家跡をみて気分が悪くなり、「来なけりゃよかった」とつぶやきながら町をあとにした。
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町外れの高良山から、耳納（みのう）連山の稜線を東へ。眼下には広大な筑後平野が広がる。標高８０２メートルの鷹取山からはハングライダーやパラグライダーが飛び立ち、眼下のに田主丸町に滑空していく（写真２）。父の倒産、都落ちで、東京から転校、１年間だけ通ったこの町の中学校が見えた。当時、休憩時間になると東京からの転校生をひとめ見ようという生徒で僕の教室の窓が鈴なりになったことなど思い出した。
山をおりたところに見事な桜並木があった（写真３）。地図をみると「流川」とある。満開の菜の花と桜が見事で、Ｎ君夫妻とともに感嘆の声をあげた。見事すぎるくらいの景色なのに、あまり知られていないようだ。後刻インターネットで調べたら、約１０００本の桜を保存会が育てているとのこと。
そこから吉井町へ。むかしは平凡な田舎町だったが、いまは白壁土蔵と疎水の町としてすっかり観光地になった（写真１）。ほんとうに美しい町だ。実はここは僕の生まれた町。母の実家がかつてここにあり、里帰りした母がここで僕を産んだというわけだ。
１０数年前、両親と探しあてたことはあったが、場所の記憶があいまいだった。しかし久留米と違って、こちらはすぐに生家をみつけることが出来た(写真４＝右の家）。街並みがまったく変わっていなかったからだ。子供の頃、夏休みに東京から帰ったおじいちゃんの家の前には、住む人は変わっても変わることのない清らかなせせらぎが流れていた。
自分本位のわがまま旅に付き合ってくれたＮ君ご夫妻ほんとうにありがとうございました。とても楽しい３日間でした。
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